大阪府南部に位置する、ある福祉法人。その法人は、小さな地域密着の障がい者福祉施設として、多くの人々に温かな居場所を提供してきました。スタッフ一人ひとりが家族のように利用者に寄り添い、利用者のご家族からも絶大な信頼を得ていた施設でした。
しかし、その信頼が突如として崩れ去ったのです。
【小さな違和感から始まった】
「なんか最近、備品が足りないことが多いな」「申請された請求金額が多すぎるような…」
それは、理事長がふと感じた小さな違和感から始まりました。経理処理は全て、事務長を兼任する40代の男性職員に一任していたのですが、ここ半年で施設運営費が異常に増加していたのです。
税理士に相談しても「書類上は問題なし」と言われるばかり。法人内の誰もが「まさか、あの人がそんなことをするはずがない」と思っていた矢先、決定的な事実が発覚しました。
ある職員が、事務長のパソコンから偶然にPDFデータを開いてしまったのです。そこには、明らかに架空の請求書、存在しない業者の取引履歴、さらには法人名義の口座から私的口座への送金履歴が記されていました。
被害額は、総額およそ850万円。
利用者のための備品、職員の手当、地域イベントの活動費――そのすべてが盗まれていたのです。
【弁護士を通じての告訴】 ・・ しかし
理事長はすぐに顧問弁護士に相談し、業務上横領罪としての刑事告訴状を作成し警察署に提出。
ところが、警察からは意外な反応が返ってきました。
「被害の立証が難しいですね。法人の内部管理の甘さも指摘されかねませんよ」
「形式的には合意のある支出とも取られかねない部分が多いですね」
唖然としました。弁護士が整えたはずの書類も、証拠も、警察の受理は見送られたのです。
理事長は悔しさに震えながら、言いました。
「私たちは、何も守れないのか…?」
【そのとき現れた、当社のコンサルタント】
その相談が、私たちディフェンスカンパニーに寄せられたのは、その数日後でした。
私たちはすぐに、元警察組織の捜査経験者で構成された調査チームを編成。内部文書、メール履歴、ログ記録、銀行明細のデータなどをすべて洗い直しました。
そして驚くべきことに、彼が使用していた私的口座に、複数の“実在しない業者名義”からの入金履歴があることを突き止めたのです。さらには、施設の他職員が「依頼もしていない物品」が発注されたことに関する内部チャットのスクリーンショットも見つかりました。
当社独自の調査資料は、ページ数にして312ページ。内容は時系列に整理され、誰が読んでも「これは横領だ」と理解できる明白な構成でした。
【そして、刑事事件へ】
当社の顧問弁護士が新たに受任し、私たちの調査資料を添えて告訴状を再提出。理路整然として非の打ち所もない完璧な告訴状であった為、さすがに警察も受理し本格的な捜査が動き出しました。
事務長の自宅を家宅捜索。パソコンとスマートフォンからは、更なる送金証拠、知人とのやり取り、詐取金の使い道が明るみに出ました。
彼は正式に逮捕・起訴され、被害額の一部は民事訴訟により返還が認められました。
彼がいなくなった後、職員たちは一時的に士気を落としましたが、理事長が集めた全職員への謝罪と説明の場で、ある若い職員がこう言いました。
「またゼロから、利用者さんの笑顔を守るために始めましょう」
【失ったものと、守ったもの】
この事件で、失ったお金は大きかった。しかし、法人として「自らの力で真実を暴き、不正に対峙した」という実績は、今後の信用へとつながっています。
内部不正は、どの企業でも起こりうることです。それを「うちは関係ない」「まさかあの人が」と見逃してしまえば、気づいたときには手遅れかもしれません。
だからこそ、私たちは言います。
不安を感じたら、すぐに動くこと。
そして、自らの組織を守ることに、一歩踏み出す勇気を持つこと。
私たちディフェンスカンパニーは、そんな皆さまの“盾”でありたいと、心から願っています。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
信頼は、守るものではなく、守り抜くものである
これは、元警察官だった私たちが、現場で学び、胸に刻んできた信条であります。
不正と闘うことは決して簡単なことではありません。しかし、正しい行動が評価され、次の希望を生み出す未来を信じて、私たちは今日も皆様とともに歩み続けます。
※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。
法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。