登記変更による会社乗っ取りから救出した、ある中小企業とその再生の物語
兵庫県姫路市。ものづくりの魂が息づくこの地に、30年近く地道に製造開発を続けてきたある中小企業がありました。
「自分の技術で、社会に貢献したい」
そう語る代表取締役のN氏は、長年にわたり部品加工のノウハウを磨き上げ、ついには世界でも珍しい工法の特許を取得。町工場の枠を超え、国内大手との共同開発案件も抱える、まさに地場産業の希望とも言える存在でした。
しかし、そのすべてが、ある日を境に崩壊寸前となったのです。
突然届いた「退任通知」
それは、たった一通の通知から始まりました。
「このたび、代表取締役を変更いたしました」
法務局から届いた登記完了通知には、自分の名ではなく、全く見知らぬ人物の名前が記載されていたのです。
登記簿を確認すると、代表変更だけでなく、株主総会議事録、取締役会決議、定款の一部までが変更されたと記録されていました。
その瞬間、N氏は理解しました。
会社を、乗っ取られた。
弁護士も頭を抱えた「偽装と整合性」
すぐに弁護士に相談。刑事告訴と登記抹消手続きに動きましたが、そこには厚い壁がありました。
提出された登記変更の添付書類は、巧妙に偽造されており、形式上は「手続きが整っている」とみなされていたのです。社印も代表印も押されている。しかも、それが偽造か否かの判断には「筆跡鑑定」や「原本照合」といった専門的な捜査が必要。
弁護士はこう漏らしました・・・
「民事的な回復は可能かもしれませんが、時間がかかります。刑事告訴も、立証に難航するでしょう」
N氏は絶望しました。経営者としての地位だけでなく、信用、取引、技術、すべてを一瞬で失ったように感じました。
そんなとき、私たちに声が届きました
N氏の知人が、当社ディフェンス・カンパニーの存在を伝えてくれたのです。
元大阪府警の警察官、企業危機の最前線で活動する私たちのチームは即座に動きました。
まず、登記に添付された「株主総会議事録」や「退任承諾書」に記された筆跡を、依頼者提供の書類と比較し、専門機関に依頼して鑑定を実施。その結果、明らかにN氏本人の筆跡ではないという鑑定書が得られました。
次に、偽装された押印の経路を追跡。
社印の管理に関わっていた元従業員の一人に事情聴取を行った結果、第三者に印鑑を貸与していた事実が判明しました。
さらに、元取引先との不自然な名義変更契約書の存在も浮上し、相手方が周到に準備した「合法を装った乗っ取り」の構図が徐々に明らかになっていきました。
逆転への一手 ― 警察OBの執念
当社のコンサルタントは、かつて実際に組織犯罪を摘発してきた元エリート捜査官。
彼の一言が、局面を変えました。
「この手口は、過去にあったある手形詐欺事件と酷似している。あのときの立証方法を使えるはずだ」
その後、偽装書類に関与した者の一人がSNS上で不自然な金銭授受を示唆する投稿をしていたことが発覚。決定的な証拠となり、警察に再度提出した告訴状は正式に受理されました。
会社は守られた、技術は戻った
登記は無効とされ、N氏の代表者地位は正式に回復。
流出しそうになっていた技術契約も法的に差し止められ、大手企業との提携も再開されました。
N氏が涙ながらに語ってくれた言葉が、今も忘れられません。
「社名を守るということは、人生を守るということだった。
あのまま諦めていたら、技術も社員も、そして私自身も壊れていました。
助けてくれて、本当にありがとう」
私たちは、助けたのではありません。
彼の勇気に、応えただけです。
おわりに
会社の信用、印鑑、登記、技術
これらを奪う者たちは、法律のスキをついて静かに近づいてきます。
しかし、どんなに巧妙な偽装も、真実を照らす光の前では色あせます。
私たちディフェンス・カンパニーは、その光を放つ存在でありたいと願っています。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
会社を乗っ取られるのは一瞬、取り戻すには、覚悟と闘志と真実の力がいる。
だが、失った信頼を取り戻す道を照らせるのは、真実を追い続けた者だけである。