高齢元組員が病院を支配した日
【現実に起きた事案と背景】
大阪市内にある民間病院。そこに一人の高齢患者が入院していた。年齢は75歳。見た目は穏やかだが、腕にはびっしりと入れ墨が刻まれ、ただ者ではない雰囲気を纏っていた。
この男は、かつて暴力団に所属していた人物であり、入院生活の中で看護師へのセクハラ発言や怒声、威圧的な態度を日常的に繰り返していた。他の入院患者たちも居心地の悪さを訴え、病院内の雰囲気は最悪の状態に。
ついに病院側は、彼に退院を求める通知書を交付。しかし彼はそれを破り捨て、「話があるなら直接病室に来い」と怒号を上げる始末。院長や事務長も対応に追われるが、暴言と威嚇の前に職員は萎縮し、完全に“病室を占拠”された状態になっていた。
院長の友人からの紹介で、当社ディフェンス・カンパニーが動き出した。
【問題の本質についての分析】
問題の本質は、暴力団出身者という背景ではなく、施設内における「言葉の暴力」や「心理的支配」が他者の尊厳を踏みにじり、医療空間の秩序と安全を根本から破壊していたことにある。
病院は治療と癒しの場であるべきであり、そこにいる誰もが平穏でなければならない。入院患者という立場を盾にして、暴言・威圧・支配を繰り返す行為は、明確な“内部からのハラスメント”であり、一般企業で起これば即刻懲戒処分に値する行為である。
このような状況において、病院という組織が自力で適切な対応をとれない場合、第三者の専門的な介入こそが、空気を変える最初の一手になる。
【ディフェンス・カンパニーが提供した解決策】
〇警察OBによるヒアリング介入
当社の警察OBが「事情聴取」という形で本人と対面。過去の経歴や態度も含めて圧をかけず、しかし一切の妥協なく事実確認を進めた。
〇入院患者・職員からの証言記録
看護師や他の入院患者への聞き取り調査を実施。恐怖や屈辱を感じた具体的な証言を複数記録し、客観的な記録として病院側の正当性を強化。
〇病院のガバナンス再構築
医療現場における対応マニュアルを再点検し、今後のハラスメント事案への即応マニュアルを整備。職員が迷わず対応できるよう、院内教育を開始。
〇通知書の法的有効性確認
当社の顧問弁護士が通知書の書式・文言を確認し、法的に問題がないことを確認。万が一の法的トラブルに備えた対応策も整理。
〇退院後のトラブル予防策
退院後の逆恨みや付きまといの可能性を想定し、病院の出入口や看護スタッフの動線にセキュリティ強化案を提案。
〇病室内の会話録音と法的検討
病室内での録音について、当社顧問弁護士と協議し、違法とならない範囲での記録方針を確立。再発防止に向けた証拠確保を重視。
〇周囲患者の心理ケア対応
精神的な苦痛を訴えていた他の患者へのケア方法について、医療福祉専門スタッフと連携し、回復に向けた支援を展開。
〇暴力団関係者への対応マニュアル作成
今後の同様事案への備えとして、反社会的勢力に対する医療機関独自の行動基準を策定し、現場スタッフに共有。
〇関係機関との情報連携
警察署、保健所等とも連絡体制を整備し、もしものトラブル時の即応態勢を構築。
【解決へ】
もっとも、解決に導いた最大の要因は、当社が外部顧問として危機管理を正式に受託し、当該患者に対して、病院の意向を直接伝えた場面だった。
応接室に通された当該患者。そこに現れたのは、かつて暴力団の取り調べを幾度となく担当してきた元刑事の相談員だった。
彼が元警察官だと知った瞬間、空気が一変した。応接室は、まるで取調室のような緊張感に包まれ、過去の「現役刑事と元暴力団」の構図が自然と浮かび上がった。
刑事は、一切声を荒げず、過去の捜査で培った「間」と「語り口」で諭すよう静かに語りかけた。
「あなたの行動や言葉が、どれだけの人を萎縮させてきたか。病院は治療の場。威圧や暴言で空間を支配する場ではない。」
さらに、このような患者には、単に書面で通知するだけでは逆効果だ。じっくりと話をし、じっくりと話を聞いた上で、やった行いについて冷静にならせ、言い訳のできない状況を理解させなければならない。それこそ、元刑事でなければできない仕事である。
その言葉に、患者は最初こそ反発したが、次第に姿勢を崩し、最後には目を伏せて「すまんかった。もう出るわ」と一言。
最終的には、病院側からの再通知を受け取り、円満とはいかないまでも“納得の上での退院”という形を取ることができた。
看護師からは「やっと夜が怖くなくなった」「患者として接するのがやっと普通に戻った」との声が上がり、他の患者からも「静かに眠れるようになった」と感謝の言葉が届いた。
病院全体が、恐怖から解放され、本来あるべき姿に戻った瞬間だった。
【おわりに】
病室の中の支配者を排除することは、単なる患者の退去ではなく、病院という命を守る場の尊厳と秩序を取り戻す行為だったといえるでしょう。
ディフェンス・カンパニーは、目に見えない脅威を見逃さず、誰もが見て見ぬふりをする状況にこそ介入し、心ある人々の安全を守ります。
私たちは、困っている人の盾、会社の盾、そして社会の盾であり続けます。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
弱き声の代弁者が、真の秩序を築く
どんなに小さな声でも、それが正しければ守られるべき価値がある。その声を拾い上げ、形にする力こそが危機管理の本質である。
※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。