職場内の暴行事件が企業に与えた致命的打撃とは
北海道のある企業で、社内に設置された観賞用水槽の管理を巡るトラブルをきっかけに、従業員に対して激しい暴行が加えられ、その映像がSNSで拡散される事件が発生しました。暴力を振るったのは経営陣の一人であり、さらに別の幹部が被害社員を押さえ込む様子まで映像に記録されていました。この事件は瞬く間に全国に波紋を広げ、スポンサー契約の打ち切りや行政認証の取り消しといった社会的制裁にまで発展しました。
企業が抱えるリスクは、暴力行為そのものだけではなく、それが社内で黙認され、管理体制が機能していなかったことにあります。まさに、企業の倫理と組織統制が問われる事案でした。
本稿では、危機管理の専門集団ディフェンス・カンパニーが、こうした事案が企業に及ぼす損害と、その防止・対処のために実践できる策を整理し、提携弁護士との連携により法的にも倫理的にも盤石な危機対応を構築するための知見をお届けします。
【職場内暴力がもたらす経営リスク】
暴力行為は、刑法208条(暴行罪)または204条(傷害罪)に該当する重大犯罪であり、企業内での発生は、加害者個人のみならず、使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反(労働契約法第5条)として、法人自体にも損害賠償や刑事責任が及ぶ可能性があります。
また、企業イメージの毀損による取引停止、株価下落、パートナー契約の解除など、間接的な経済的損失も極めて甚大です。
【問題の本質についての分析】
〇暴力行為を可能にした「権力の私物化」と「内部統制の崩壊」
暴力行為そのものは刑事事件として処理されるべき問題ですが、問題の本質はその背景にある「組織構造のゆがみ」にあります。
加害者が経営陣であったという点は重要です。従業員は、上下関係の中で反論や拒絶が困難な状況に置かれており、それ自体が「自由な職務遂行環境」や「人格権」が否定された状態です。
つまり、「企業の代表者が組織内で絶対権力を持ち、誰もその行動を制止できない環境」が放置されていたことが最大の問題なのです。これは、ガバナンス(統治)不在の証明にほかなりません。
〇「通報機能の欠如」と「組織的沈黙の強制」
暴力行為が幹部によって行われ、かつ同じ幹部がそれを補助したという構造は、「通報できない職場風土」の存在を浮き彫りにします。
このような環境下では、誰も被害を訴えず、目撃者も声を上げず、事件は“密室の中で”繰り返されることになります。
内部通報制度や第三者相談窓口が形骸化していた、あるいは設置すらされていなかった可能性が高く、組織として「未然防止の仕組み」が機能していなかったことが致命的です。
〇「企業イメージと実態の乖離」が招いた社会的制裁
この企業はSDGs認証や健康経営認定など、対外的には「高倫理」「高透明性」をアピールしていました。しかし、実態は暴力を許容する風土が存在していた。この“看板と実態の乖離”こそ、社会が強く反応した要因です。
SNSでの拡散が爆発的に広がったのは、まさにこの「裏切られたイメージ」への憤りに端を発しており、信用崩壊のスピードは加速度的でした。形式的コンプライアンス(見せかけのCSR)では、現代社会における信頼は保てないのです。
【ディフェンス・カンパニーが提供する危機管理支援】
〇 暴行事案の即時調査と事実整理
当社の元刑事らによる中立的・迅速な現場ヒアリングを実施。関係者の聴取や録音データの解析などにより、初動段階から正確な状況把握の調査を行います。
〇 映像・音声などの証拠保全支援
スマートフォンや防犯カメラの映像データ、録音、SNS投稿のスクリーンショット等を、証拠価値を損なわぬよう法的観点(顧問弁護士監修)から整理・保全。
〇 被害者・加害者への個別対応体制の構築
被害者のケアを含めた社内配置転換、加害者の一時出勤停止措置、懲戒委員会の開催支援など、組織的対応を構築。
〇 広報・炎上対応マネジメント
SNS上での拡散や報道機関の取材等に対し、当社が危機管理広報文書を作成し、企業の信頼回復を図ります。
〇 弁護士と連携した法的措置支援
示談・告訴・懲戒解雇に向けて、当社は証拠の精査と資料整理を担い、正式な法的措置は提携弁護士が受任して対応。企業が非弁活動に該当しないよう法的にクリーンな支援体制を維持。
〇 再発防止策の制度構築
管理職研修、内部通報制度の強化、職場内ハラスメント監視体制の導入など、企業体質そのものを改善するための再発防止体制を設計。
〇 内部統制の再評価コンサルティング
就業規則・服務規律・懲戒規定の見直しを通じ、同様の事件を未然に防ぐガバナンス強化策を提示。
〇 社外通報窓口(ホットライン)設置支援
第三者としての当社が、社内で声を上げづらい職員のために匿名通報制度の導入支援を行い、内部不正や暴力行為の早期発見に寄与します。
【おわりに】
企業とは人の集まりであり、その組織の本質は“緊急時の対応力”によって試されます。仮に社長や役員による暴力という想像を絶する事態が発生したとしても、適切な対処を講じれば、企業は再生可能です。
ディフェンス・カンパニーは、刑事の経験と法的知見を融合させたプロフェッショナル集団として、「暴力は許さない」という企業文化の再構築を支援し、クライアントの信頼回復と社会的信用の維持に尽力いたします。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
組織の真価は、誰が過ちを犯したかではなく、どう立ち直ったかで決まる
※過失や不祥事の発生は避けられないが、それに対して誠実で迅速な対応を取れるかが企業価値を決めるのです。
※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。