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【第三者委員会の設置】

医療法人理事長の腐敗を暴いた、捜査のプロたちの逆転劇


ある中規模医療法人。十数か所の病院を展開し、社員も理事も多数存在するこの法人に、不穏な空気が立ち込めていた。理事長が経理担当者を巻き込み、巧妙に資金を抜き続けていた疑惑が浮上していたのだ。さらに、自身に好意的な理事たちには豪華な食事や旅行などの“恩恵”を提供し、不正の片棒を担がせていた。

一部の理事が監事に内部監査を依頼したが、その監事も理事長の影響下にあり、結果は「問題なし」。次に、社員による臨時社員総会で第三者委員会(顧問弁護士と会計士)を設置し調査が行われたが、巧妙な手口であった為、不正の証拠は見つからず、同じく「問題なし」との結論に。

そんな折、風向きが変わる。

関係者の一人が口にしたのは、ある“異色の集団”の存在だった。

ディフェンス・カンパニー

そこは、警察OBで構成された元スーパー刑事たちの精鋭集団であり、長年にわたる凶悪事件・知能犯の捜査を経験したプロ中のプロたちが結集していた。だが、ただの警察出身者ではない。その背後には、弁護士、税理士、社労士、行政書士、IT調査員、探偵といった各分野の専門家たちが強固に連携した“真のワンチーム”が存在する。

「ここなら、やってくれるかもしれない」

誰かのその一言を皮切りに、法人内の一部理事たちの間で新たな“第三者委員会”の設置が動き出した。

捜査の目を持つプロ集団ならば、この精緻に仕組まれた不正の糸口を見つけ出してくれるかもしれない。

いや、きっと見つけてくれる。

そう確信した瞬間だった。


【問題の本質についての分析】

この事案の本質は、「組織の内側で共犯関係が形成され、不正の発見が極端に困難になっていた点」にある。

理事長による巧妙な利益供与によって、組織全体が“沈黙の共犯関係”に陥っていた。表面上の調査では、誰も証言せず、書面にも痕跡が残されていない。だからこそ、通常の会計監査では不正の実態が見抜けない構造になっていた。

我々が注目したのは、「追うのではなく、逆にたどる」という捜査の視点だった。


【捜査のプロ集団による調査】

お金の流れを逆方向から追跡

私たちが最初に着手したのは、収支報告書ではなかった。

「どこで使われたのか」ではなく、「本当に使われていたのか」を問うために、元捜査指揮官であった者ならではの感覚で、現場の先へと足を運んだ。高額請求された備品、外注業者、コンサル契約。それらの実態を一つひとつ洗い出し、インタビューと裏付け調査を重ねていく。

やがて、姿の見えない業者や、実体のない業務が浮かび上がってきた。

“帳簿に記された金”と“現場での事実”の間に、静かに横たわる深い断絶。

その違和感が、最初の突破口となった。表面的な収支帳票のチェックではなく、消費側の実態を先に調査。支出先の業者やサービスを突き止め、インタビューや現地確認を行い、架空取引や過大請求の実態を掴んだ。

〇理事たちの個別事情を精査

「なぜ、この理事だけが頻繁に海外出張へ?」

資料に記された名目は“医療技術視察”。しかし、訪問先に医療機関の名前はない。

交際費、旅費、報告書——全てが整っているようで、肝心の“証拠”だけが存在しなかった。

我々は一人一人の経費明細を過去数年分さかのぼり、理事長との接点と照らし合わせていく。

恩恵の裏に隠された小さな“報酬”。その積み重ねが、理事たちの沈黙の理由だった。理事ごとの恩恵の受け方に着目し、出張費・交際費・旅費の名目で法人資金が不正使用されている痕跡を発見。

“口止め料”としての金銭の流れを解明

形式上は報酬、実態は沈黙の対価。

ヒアリングを通じて、ある経理担当者が漏らした一言から、我々は“感謝金”という名の不正支出の存在にたどりついた。

定期的に振り込まれていた金は、業務の成果でも成果物でもなかった。

ただ一つ、「これ以上深くは聞かないでほしい」という無言の圧力。

その“圧力の痕跡”を、私たちは帳簿と証言の中から丁寧にすくい上げていった。帳簿上は正当な名目でも、対価としての業務実態がなく、虚偽の支出である証拠を関係者から聴取。

理事個別の事情聴取による心理戦

元刑事は、ひとり、またひとりと理事を静かな部屋に呼び出した。

「調査の一環として、少しだけお話を伺わせて下さい。」

その柔らかな第一声の裏には、百戦錬磨の取調術が潜んでいた。彼らが相手にしたのは、凶悪犯や詐欺師、政治的圧力の中で否認や黙秘を続けた犯罪者を自白させてきた取り調べのプロだった。

目の前の理事たちは、ほんの小さな不正、旅費の水増し、架空の会食費、忘れかけていた出張報告の虚偽。それを目の前に突きつけられた時、人は驚くほど脆くなる。

「いや、それは…全部ではなくて…」

「それでも、理事長の指示だったのでは?」

わずかな沈黙のあと、声がこぼれる。

「はい……。あの人の指示でした。断れなかったんです」

プロの元捜査官は、感情の機微を見逃さない。言葉の選び方、目線の動き、声の震え。取調べではなく、「会話の中に真実を浮かび上がらせる技術」で、彼らの口を次々に開かせて行くのはいとも簡単だった。なぜなら、彼らは根からの犯罪者ではなく、本来は普通の一般人だから。

結果として得られた証言の数々は、理事長の不正を裏付ける決定的なピースとなり、後の告発へと繋がった。

録音・記録・メモの収集と照合

不正は、言葉の端々や、誰も見ない備忘録の片隅に潜む。

業務日誌や会議録、メールの草案までを一つ一つ丁寧に拾い集め、理事たちの証言と重ねていった。

一見して無害なメモの一文が、別の証言と組み合わされることで、“動かぬ証拠”へと姿を変える。

小さな破片を並べていくと、そこに浮かび上がったのは、組織ぐるみの隠蔽構造だった。業務日誌や会議録の記録と理事の証言を照合することで、齟齬を浮かび上がらせ、不正を裏付ける資料として蓄積。

偽造された私文書の検出と分析

ある日提出された一枚の支払い申請書。その文面は、別の月の別の理事の報告とまったく同じだった。

「これはテンプレだ!」

経験を積んだ調査官が、微かな違和感に気づく。

筆跡の微細なゆがみ、押印位置の異常な整い方。元捜査官の目から見れば、その違和感は間違いなく「偽造」であった。

文書は、人の手からしか生まれない。

だからこそ、そこに不正の影は必ず残る。複数の支払い明細や承認書類に同一筆跡・テンプレ文を発見。文書鑑定士による鑑定も(当社顧問弁護士を通じて)実施。

探偵会社との連携による尾行調査

「存在するはずの取引先」を探す。

だが、Google Mapにも、現地にも、その業者の姿はなかった。

外注先として法人が毎月数十万円を支払っていた業者は、実在しない幽霊業者だった。

探偵会社と連携し、所在地へ張り込みと聞き込みを重ねる中で、看板だけ存在する事務所の実態が明らかになっていく。

その先にあったのは、理事長個人と関係する口座への資金の流入だった。実態のない業者とされる取引先に対して実地調査。実在しない架空業者への送金が判明。

不正を“見逃された理事”の再教育

「今回は見逃す。ただし、次はない。」

告発に協力した理事の中には、小さな不正に関与していた者がいた。

だが、我々は彼らを切り捨てるのではなく、「むしろ監視の目」として活用する道を選んだ。

再教育を施し、倫理的な再起を促す。

恩赦に近い措置だったが、その裏には明確な「再発防止策」としての期待が込められていた。恩恵を受けていたが告発に協力した理事については、公的責任と倫理の再確認を行い、組織の健全化の中核に据えた。

法的検討

当社の精緻な調査により明らかとなった各種の不正行為について、最終的な法的整理を行うべく、当社の顧問弁護士に調査報告書を提出。

顧問弁護士は、当社が収集した証拠および証言、記録、金銭の流れをもとに、刑法上の構成要件に照らし合わせて法的評価を行った。

その結果、業務上横領、特別背任、私文書偽造といった複数の犯罪に該当する可能性が極めて高いとの見解が示された。

これに基づき、調査報告書には「本件の刑事的責任を問う必要性がある」との所見が記載され、必要に応じて当社顧問弁護士を通じた法的措置の実行体制が整えられた。

【解決へ】

理事長は解任へと追い込まれ、医療法人の経営は健全な軌道に戻った。恩恵を受けていた理事たちも、当社の「生かして殺す」方針のもとで処分保留とし、再教育と監視下での業務継続を認めた結果、自らの職務に真摯に取り組むようになった。

法人内には透明性と緊張感が生まれ、結果的に組織の生産性と信頼性は大幅に向上した。


【おわりに】

組織の中で不正が生まれるのは、ひとえに“見て見ぬふり”という人間の弱さに起因します。

しかし、見えないものを可視化し、語られない真実を言葉に変える力こそ、私たちディフェンス・カンパニーの強みです。

我々は今後も、困っている人、会社、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

沈黙は忠誠にあらず、共犯の証で不正の温床である

組織における沈黙は、時に秩序を守るように見えて、実は不正を助長する最大の要因である。勇気を持って声を上げる者がいてこそ、組織は健全に進化する。


※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。