【社員犯罪の代償】

従業員の不祥事は、企業の命運をも左右する。


ある日、大阪に本社を構える甲社の社長(B社長)のもとに一本の電話が入った。

「御社の従業員A氏が、連続強制わいせつ事件で逮捕されました。報道対応を至急ご検討ください。」

信じられない思いで、社長はその名を聞き直した。社内では真面目で通っていた若手社員A氏。しかし、勤務後にジムで知り合った女性を複数人狙っていたという。

翌朝、ニュースでは「建築会社に勤務の男が逮捕」との報道。会社名は伏せられていたが、SNS上では匿名掲示板で勤務先が間接的に特定され、炎上が拡大。採用活動は中断、取引先も動揺し、社内はパニック状態に陥った。

さらにSNS上では、「会社ぐるみで隠蔽しているのではないか」「上司が黙認していたのでは」といった根拠のない憶測が拡散され、一部取引先では契約見直しの動きすら出始めた。

B社長が頼ったのが、我々ディフェンス・カンパニーだった。


【問題の本質についての分析】

従業員の犯罪行為が「私生活上」のものか、「業務に関連した」ものかによって、企業が負う責任範囲は大きく異なる。

しかし、実際にはその境界線が曖昧なケースも多く、結果的に「企業名の報道」「SNSでの炎上」「損害賠償請求」「監督責任の追及」などの二次被害が発生する。

特にSNSにおいては、匿名で拡散された情報が半永久的に残り、会社が否定せずに放置していると、「沈黙は関与の証拠」と誤解されるリスクが高い。噂は一人歩きし、あたかも会社が加担していたかのような印象を世間に与え、最終的には取引停止・新規契約破棄など、経営に直接的な影響を及ぼす可能性もある。

つまり、問題の本質は単なる「社員の不祥事」ではなく、

・企業の教育・監督義務体制の不備 ・危機対応マニュアルの欠如 ・SNS拡散に対する防衛手段の未整備 ・沈黙によって悪意を招くリスク管理の欠如

にこそある。


【ディフェンス・カンパニーが実践した解決策】

〇 緊急ヒアリングの実施と事実整理

まずは即座に現地に赴き、B社長と関係者に対して徹底したヒアリングを実施。当社調査官による事実確認を行い、会社の関与が一切ないことを裏付ける文書を迅速に作成した。

〇 社内外向け危機管理コメントの作成支援

メディアからの問い合わせと、混乱する取引先に備え、当社顧問弁護士の意見を踏まえた危機管理コメントを策定。「冷静さと誠実さ」を前面に出した文面が信頼を得た。

〇 SNS上の風評リスク監視と削除要請支援

SNSの投稿が拡散されるスピードは凶器に等しい。すぐさまIT調査チームが社名に関する投稿を検出し、削除申請を行いながら、ネット風評監視体制を実施。

〇 被害女性との間接的接触と示談調整(弁護士対応)

当社の調査資料をもとに、弁護士が被害者側とコンタクト。会社の非関与を前提とした形で誠実に交渉し、穏やかな示談成立を導いた。

〇 新・社内研修プログラムの構築

「もう二度と、同じ事態を繰り返させない」その想いから、刑事経験を持つ当社スタッフが中心となり、性犯罪に関する知識、SNSリテラシー、組織倫理を柱とした研修をスタート。

〇 採用時の身上調査制度の見直しと強化

個人情報保護と人権配慮を守りつつ、犯罪歴の自己申告制を含む面談項目を導入。過去の経歴を可視化する制度へと改訂。

〇 顧客・取引先への誠意ある通知体制整備

会社の立場を正確に伝え、信頼を回復すべく、個別の説明文書を取引先ごとにカスタマイズして送付。誠意ある対応に「さすが」との評価を得た。

〇 内部通報制度の再整備

「おかしい」と思ったときに、誰でも声を上げられる体制を。匿名でも通報可能な仕組みを整備し、同時に通報者保護の社内規程も刷新。

〇 広報戦略チームとの連携構築

逆風の中でも企業の誠意と信頼を取り戻すには「見せ方」も重要。当社の広報パートナーと連携し、事後のポジティブな情報発信で空気を反転させた。


【解決へ】

当社の対応により、報道各社からの直接的な会社名の言及は防がれ、メディアリスクを最小限に食い止めることができた。

SNSで拡散された情報も速やかに削除が進み、会社としてのスタンスを明確に公表したことで、「関与していたのでは」といった憶測が自然と沈静化。

社内では再発防止のための社内教育と組織改編が行われ、社員からは「自分たちも当事者になり得る」という意識改革が生まれた。

また、SNS監視と削除依頼が早期に実施されたことで、検索エンジン上の表示も1ヶ月で改善され、企業イメージの回復へとつながった。

取引先からは「迅速かつ誠実な対応だった」と高く評価され、契約継続が多数決定。


【おわりに】

たった一人の過ちが、企業全体を揺るがす。

しかし、それを「企業の終わり」にするのか「企業の再出発」にするのかは、備えと判断にかかっている。

我々ディフェンス・カンパニーは、警察・法律・広報の専門家が手を携え、どんな困難にも「人と企業の盾」となって立ち向かいます。

困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

一人の闇が、全体の光を試す

組織は常に個の行動によって評価される。だからこそ、真の強さは、光を守る備えにある。全体を守るためには、個を見つめる目が必要だ。


※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。