【退職者のUSBが企業を壊す】

退職間際の情報持出が招く、信用棄損と損害拡大の現実


2025年4月、関西の大手不動産会社において、退職直前の元社員が顧客情報をUSBメモリにコピーし、競合他社に転職後、そのデータを使って営業活動を展開していたことが発覚しました。被害企業は信用を著しく損ない、取引先の複数社が離脱。1億円を超える損失が生じたとされ、刑事告訴に至る事態へと発展しました。これは、退職者による情報流出問題の典型例であり、企業にとっては決して他人事ではありません。特に営業職や顧客管理部門におけるデータアクセス管理の甘さが致命的な結果を招くことが改めて明らかになりました。

【問題の本質についての分析】

この問題の本質は、「退職者が情報を持ち出す余地が存在していた組織体制」にあります。多くの企業では、退職届提出から最終出勤日までの間に業務引継や残務処理が行われ、その過程で大量のデータへのアクセスが可能となる状況が散見されます。また、USBや私物スマホによる情報持出を技術的に遮断できていない企業が多く、管理監督の実効性が問われています。さらに、退職者がその情報を利用して競業企業で営業を行った場合、単なるモラル違反ではなく、不正競争防止法上の違法行為にも発展する重大な問題です。


【ディフェンス・カンパニーが提供する実効的な対策】

〇【退職者管理プロトコルの設計支援】

退職決定時点から最終出勤日までの業務制限措置やアクセス制御、立会い下での業務引継などを明文化し、実務に落とし込むための体制設計を支援します。

〇【USB使用の物理制限とログ監視】

特定部署におけるUSB接続制限や、PC操作の常時ログ記録・解析体制を整備することで、情報持出の「兆候検知」を技術面からバックアップします。当社では、各PCにインストール可能なログ監視ソフトを独自に保有しており、USBの挿入日時、取得したファイルの種類、移動先の確認まで詳細に把握できます。このソフトを導入することで、退職者が行う情報持出の未然防止・事後確認の双方に対応可能です。

〇【退職時インタビューと誓約書作成支援】

当社独自の「刑事視点による退職者ヒアリング手法」を応用し、データ持出のリスクがあるかどうかを精緻に分析。競業避止義務や情報漏洩に関する誓約書の整備・強化もアドバイスします。

〇【不正競争防止法に基づく対抗措置の検討支援】

当社顧問弁護士の意見をもとに、退職者による情報持出が不正競争防止法に該当するかを精査し、弁護士による告訴・民事請求への対応を支援します。

〇【証拠確保のためのITフォレンジック調査】

当社のIT調査チームが、退職者のPC操作履歴やデータ転送履歴などを復元・解析し、訴訟に耐えうる証拠の保全を行います。

〇【競合企業との調整・通知文書作成支援】

顧問弁護士と連携のもと、情報流用先である競合企業に対する通知書や事実調査依頼書の作成を支援。自社の情報保護姿勢を明確に示します。

〇【内部通報制度の構築と匿名通報窓口の導入】

社員からの情報持出に関する懸念や実態把握のため、匿名通報制度を導入し、事前に不正を発見・遮断できる体制構築を支援します。


【法的根拠と解説】

不正競争防止法2条1項7号は、営業秘密の不正使用行為を「不正競争」として明確に禁止し、差止請求や損害賠償請求等の民事的救済、さらに悪質な場合には刑事罰の対象としています。

また、退職者がその情報を競合企業に持ち込んだ場合には、受け取った企業も共同不法行為責任を問われる可能性があるため、対応は迅速かつ多角的である必要があります。さらに、営業秘密と認められるためには「秘密として管理されていること」が要件となるため、技術的・組織的な管理体制の整備は不可欠です。


【おわりに】

退職者による情報流出は、単なる内部管理の甘さでは済まされない深刻な企業危機です。信用の失墜、顧客の流出、法的責任など、その影響は甚大です。だからこそ、私たちディフェンス・カンパニーは、刑事の視点・技術の視点・法務の視点を融合させ、実効性ある予防と対処を支援しています。退職は「終わり」ではなく、むしろ「新たなリスクの始まり」なのです。どうか今こそ、自社の退職者管理を根本から見直す機会としていただければ幸いです。

ディフェンス・カンパニーは、困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

養虎遺患(ようこいかん)

虎を養っておいて患いを残す。危険因子を放置すれば、やがて大きな害となって返ってくるという戒め。

退職者による情報流出は、未然に手を打たねば必ず企業を蝕む「虎」になる。


※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。