【クレカ流用の真実】

役職者が会社カードを私物化~損害回収までの壮絶な攻防


ある日、甲社(大阪市内に本社を置く中堅企業)から、ひとつの切実な相談が持ち込まれました。
内容は、社内の役職者A氏が業務用として貸与された法人クレジットカードを、長期間にわたり私的に使用していたという疑いでした。

きっかけは、経理担当者が気づいた「高級ブランドショップでの多額の決済」。カード利用明細を遡ると、飲食・衣料・ギフトカード購入など、業務と無関係な使用履歴が次々に判明。総額は、なんと300万円を超えていました。

しかもA氏はこの時点で既に退職済。甲社の代表者B社長は、怒りと同時に「泣き寝入りするしかないのか」という深い絶望を抱えておられました。

まさに「信頼していた部下に裏切られた」。そんな社長の声を受けて、私たちディフェンス・カンパニーが動き出しました。

【問題の本質についての分析】

この問題の核心は、「法人資産が、個人の利得目的で意図的かつ反復的に流用されたこと」です。
しかし問題はそれだけではありません。以下の3点に本質があります。

第1に、「社内の経理管理体制が盲点を抱えていた」こと。
日常的な信頼関係に甘えた仕組みが、こうした不正を長期化させてしまう温床となっていたのです。

第2に、「証拠を集めなければ、請求も告訴も実行できない」という厳しい現実。
退職後であっても、証拠の裏付けなしでは、法的手段も実効性を持ちません。

第3に、「被害額の回収」と「再発防止」の両輪で考えなければ意味がないという点。
単に責任追及をしても、会社の経営は守れません。次の一手がすでに求められていたのです。


【ディフェンス・カンパニーが提供した実働対応と解決策】

不正使用の全記録を時系列で再構築」

まず着手したのは、法人カードの利用履歴を「月別」「店舗別」「金額別」「用途別」に分解し、表計算ソフトで視覚化することでした。
例えば、12月24日には高級焼肉店で5万円の支出、同日夜にはブランドショップで8万円という記録。これらが「土曜深夜」に集中しており、業務とは無関係であることは明白でした。
これを証拠資料として、相手の反論余地を完全に封じる形で資料化しました。

〇 レシートの再発行を直接依頼し、商品内容を「モノ」として特定

飲食店や百貨店などに直接連絡を入れ、「当日当該カードで決済された内容(商品や人数など)」の再発行を依頼。
高級ワインの購入履歴や、女性向けアクセサリーの決済などが記録として出てきたことで、「会社業務とは無関係である」との証拠を物理的に押さえました。
中には、複数女性との高級レストランの食事に使われたことが判明したケースもあり、社内の空気は一変しました。

〇 A氏が社内で自ら「私的利用を認めたLINE」の証拠化

A氏が在職中、社内の別の社員とのLINEにて「またカード借りるで。ちょっと今月ピンチやねん笑」と軽口を叩いていた履歴を、当社が対象社員の同意を得て抽出。
これが決定打となり、「本人が私的目的で使用した意思」を裏付ける一次証拠として活用できました。

〇 警察OBによるプロファイリング的視点で「A氏の金銭的困窮」の突き止め

退職後のA氏がSNSで「投資に失敗した」などと投稿していた事実を洗い出し、生活困窮があったことを裏で把握。
これにより、浪費的な目的ではなく「借金返済の穴埋め」に会社カードを使っていた可能性も浮上し、刑事的悪質性も加点されました。

〇 告訴状案を作成し内容証明に同封するという心理的プレッシャー戦術

交渉段階では、当社顧問弁護士が作成した「業務上横領罪」での告訴状(未提出)を、内容証明の資料として同封し、「本来は警察に提出すべきものである」との文言を加えました。
これにより、A氏は「ここまで本気なのか」と恐れを抱き、弁護士を通じて即日連絡を入れてきました。

弁護士交渉における「誓約書と分割和解書」

当社は過去の同種事案の和解書をベースに、「返済総額、支払期日、遅延損害金、違約条項」を明記した和解案を作成し、弁護士へ提出。
A氏側の代理人もその具体性と実務性に驚き、結果的にこのひな形をほぼそのまま用いることで、和解契約が迅速に成立しました。

返済が滞った際の「給与差押えシミュレーション」を事前準備

交渉時点から、「支払わなかった場合に備えた強制執行の手続」も同時に想定。A氏の勤務先・給与水準などを探偵業者と連携し、把握済みの状態にしていました。
この情報を交渉の場で示したことで、A氏側の誠意ある合意を引き出す効果も発揮されました。

〇 社内説明資料を作成し、社員の不信感払拭と再発防止

B社長の意向を受けて、当社は「調査経緯と結果」「今後の再発防止策」についての社内向け資料を制作。社員向け説明会では、当社コンサルタントが立会い、質疑応答にも対応し、組織としての透明性と責任姿勢を印象づけました。

業務用カード運用マニュアルのチェックリスト化

再発防止策として、カード申請・承認・報告・決済確認を全てチェックリスト化し、社内で運用可能なGoogleフォームを設計。誰が、いつ、何の目的でカードを使ったのかが残るようにし、B社長から「ここまでやってくれるとは思わなかった」との評価を得ました。

【解決へ】

通知から4週間後、A氏側より代理人を通じて「返済交渉に応じたい」との申し出がありました。
証拠が揃っていたことで、交渉は極めて優位に進行。最終的に「総額320万円を12回の分割で支払う」旨の和解が成立しました。

その後、社内のルール整備も完了し、会社はさらなる成長軌道に乗っています。
「困った時に、本当に守ってくれる存在がいた」
そう語るB社長の言葉が、今も私たちの胸に刻まれています。


【おわりに】

会社経営とは、信頼と信用の上に築かれた繊細な建造物です。
一人の裏切りが、その根底を揺るがすこともあります。

しかし、正しい方法で立ち向かえば、必ず道は開けます。
私たちは、法的・実務的な支援を一体化した「攻めの危機管理と守りの防衛力」で、企業の未来を支えます。

ディフェンス・カンパニーは、困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

信頼の裏切りには、静かに、そして確実に反撃せよ。

相手が“まさか気づかれていないだろう”と侮ったその油断こそが、最大の弱点です。
冷静な証拠収集と論理的な対応が、もっとも強力な反撃となります。


※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。
法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。