「晒すぞ」「訴えるぞ」は犯罪? その一言、脅迫罪に該当する可能性
2024年末、SNS上である美容系インフルエンサーが顧客とのトラブルを暴露し、「金返せ。じゃなきゃ晒す」と投稿。さらにDMでは「訴えてやる」「損害賠償請求するからな」と執拗な連絡。被害女性は精神的に追い詰められ、相談先もわからず沈黙するしかなかった。そんな一件がX(旧Twitter)で拡散され、議論を呼びました。
このように、LINEやDM・電話を通じて、一般人が日常で浴びる“圧力的な言葉”の中には、実は刑事罰の対象となり得る発言が多数あります。にもかかわらず、ほとんどの人が「これは脅しに当たるのか?」と判断がつかず、泣き寝入りしているのが現実です。
【問題の本質についての分析】
私は元警察官として数多くの脅迫事件に関わってきましたが、「脅迫された側が正確に恐怖を言語化できない」「警察が“民事不介入”と受理をためらう」「言った側が言論の自由と主張する」この三つの構造が、被害者を孤立させてきました。
一方で、警察としても、すべての「晒すぞ」「訴えるぞ」という発言を形式的に脅迫と認定すれば、現場はパンクします。受理基準には“明確な違法性”と“具体的な害悪の告知”が必要となり、立件に至るハードルは決して低くありません。ですが、それでも見逃してはいけない「一線」を越えた言葉があるのです。
【ディフェンス・カンパニーが提供する解決策】
〇発言の保存と記録化
まずはLINEや電話の内容を全て記録・保存することが最優先です。感情的にならず、証拠として残す姿勢が被害認定の第一歩となります。
〇 「それ、脅迫ですよ」と冷静に返す
相手に「自分が犯罪リスクを冒している」と気づかせる言葉を返すだけで、被害拡大を防ぐケースがあります。ここで感情的になってはいけません。
〇 音声録音やスクショを推奨
電話の内容も録音アプリを使い記録化。LINEのスクリーンショットは時系列順に保存し、改変がないようデータ原本も保持します。
〇 第三者機関の名を出す
「警察に相談します」「弁護士に相談します」「記録は専門機関に提出します」と一言伝えるだけで、加害者側の態度が激変することもあります。
〇 SNSでの晒し行為には通報と開示請求
XやInstagramの投稿で実名・写真を晒された場合、速やかに違反通報を行い、発信者情報開示請求の準備に入るべきです。
〇 警察への相談は「言葉の選び方」が鍵
単に「脅されています」と言っても軽く流されることが多いのが現実です。「生命・名誉・財産に対する具体的な害悪の告知があった」と正確に伝える必要があります。
〇 民事と刑事の使い分けも重要
名誉毀損や業務妨害の要素がある場合は、刑事告訴と併行して民事で損害賠償請求を進める二段構えが有効です。
〇 「LINEいじめ」は企業内部でも問題化
業務上のやりとりの中での「晒すぞ」は、パワハラ・コンプライアンス違反として懲戒の対象になります。社内体制の整備も必須です。
〇 初動サポート
当社では、証拠収集・警察相談時の助言など、弁護士に依頼する前段階の支援が可能です。
〇 エスカレートする前に、初動で止める
多くのトラブルは「最初の1通」で止められます。我慢するのではなく、即対応が鍵です。
【法的根拠と解説】
〇 刑法222条(脅迫罪)
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処するとされています。重要なのは、「具体的な害悪の告知」があったかどうかです。
〇 判例:最決平成18年3月28日
本判決では、インターネット掲示板に「個人情報を晒すぞ」と書き込んだ行為が、脅迫罪の成立を否定されました。その理由は、告知が抽象的すぎて「被害者が明確な恐怖を感じた」とは言えなかったからです。
曖昧な表現では脅迫になりません。よって、録音やLINEで「〇〇を晒してやる」「■■へ通報する」など具体的な言葉があることが立証の分かれ目です。
〇 業務妨害罪(刑法233条)との重複リスク
「営業妨害になるぞ」「訴えてやる」といった言葉は、業務妨害罪にも発展しうるため、企業対応としても法的リスクを踏まえた記録と警告が必要です。
〇 実務への落とし込み
企業としては、LINE・Slack・Teams等のチャットツール使用に関し、ハラスメント・脅迫的言動の禁止を規定する明文化ルールが必要です。また、トラブル時には外部相談窓口の存在を社員に周知しておくことで、未然防止と早期対応が可能となります。
【おわりに】
「脅されたかもしれない。でも、どう動いていいか分からない」そんな声を私たちは数多く聞いてきました。
今、誰かに“晒すぞ”と言われて悩んでいる方がいれば、その一言は、あなたを脅かす正当な権利などではありません。
それは、法律によって裁かれるべき「犯罪」です。
あなたの恐怖と不安を、証拠と戦略に変えましょう。
正義のために戦う私たちが、あなたの背後にいます。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
黙るな。沈黙は、脅しを肯定する行為だ。
被害者が声を上げられずに沈黙してしまうと、加害者は「自分の言動が許された」と誤解し、より悪質で大胆な行動に出ることがあります。
脅しや晒し、名誉毀損といった行為に直面したとき、最も危険なのは「何もしない」ことです。
※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。
法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。