副業詐欺が奪うのは、お金だけではない
「中学の同級生から突然DMが届いたんです。懐かしくてうれしくて、まさか詐欺だなんて思いもしませんでした」
これは、実際に私たちのもとへ相談に訪れた30代女性の言葉です。
きっかけはSNSのメッセージ。「最近どうしてる?」「副業でうまくいっててさ」。再会を喜ぶ気持ちに乗じて、「副業投資」という名の詐欺は忍び寄りました。
紹介されたのは「元金融マンが運営する自動売買システム」。説明会はZoom、実績者の声はオープンチャット、サイトは本物そっくり。
結果、女性は合計80万円以上を騙し取られました。
紹介者だった「同級生」は、本当に稼いでいたように見えました。
しかし実際には、その「同級生」も詐欺グループのカモであり、加担者に仕立て上げられていたのです。
2024年6月には、警視庁がX(旧Twitter)での「SNS副業詐欺」について注意喚起を発表。詐欺師は、もはや通りすがりの赤の他人ではありません。
友人、元同僚、恋人。すべてが加害者に変わる時代が来ているのです。
【問題の本質についての分析】
かつて私は、金銭目的の詐欺グループを数多く検挙してきました。
だが、今のSNS型副業詐欺は、警察時代よりはるかに「構造が複雑」になっています。
最大の特徴は、「紹介者自身も被害者である」という構図。
つまり、捜査では「故意性」が不明確で立件が困難。しかも振込先は仮想通貨口座や海外経由、証拠はLINEと音声通話、足取りも端末も消されてしまいます。
このような案件では、初動対応の遅れが命取りになります。
警察に相談しても「詐欺かどうか断定できない」「民事で争ってくれ」と言われる。そうして時間が経過し、犯人の尻尾も証拠も消えていきます。
問題は、今の社会構造に「グレーゾーンの犯罪」が溢れすぎているということ。
だからこそ、その隙間を埋める民間の危機管理が必要なのです。
【ディフェンス・カンパニーが提供する解決策】
〇 SNS履歴の証拠保全と分析
詐欺師とのやりとりがLINEやDMである場合、時系列と会話の意図を精査し、法的証拠となる形で記録化します。
〇 振込履歴と資金移動の調査
送金先が国内か海外か、仮想通貨か現金化されたかなどを、警察が着手する前段階で調査します。
〇 紹介者との関係性の整理と法的評価
紹介者が故意か否か、どのような立場で関与していたのかを、法的責任の有無の観点から明確にします。
〇 加害者グループの通信元解析
使用端末、アクセスIP、サーバー情報などの取得に向けて、技術チームが協力し解析を進めます。
〇 詐欺グループの再犯パターン分析
当社が蓄積した事例をもとに、類似する詐欺手口や過去の加害者情報と照合します。
〇 精神的ショックへの心理的ケア
「知人に裏切られた」という精神的ダメージは深刻です。提携カウンセラーと連携し、心のケアも行います。
〇 顧問弁護士による告訴状・被害届の作成支援
証拠が整った段階で、当社から提携弁護士に引き継ぎ、迅速な告訴状作成と提出をサポートします。
〇 詐欺サイトの特定と通報支援
詐欺グループが使用する架空サイトや偽証券口座を発見・特定し、プロバイダー等への通報を代行します。
〇 警察への提出資料一式の作成
警察が受理しやすい形式で、被害者陳述書、証拠一式、経緯書などを整備します。
〇 再発防止のための情報提供と教育
被害者が再度狙われないよう、SNSセキュリティ教育やリスク回避のマニュアルを提供します。
【法的根拠と解説】
〇 刑法246条 詐欺罪の構成要件
詐欺罪が成立するには、「欺罔行為」「錯誤」「財産的処分行為」「財産移転」「因果関係」が必要とされます。本件のように「知人紹介」や「虚偽の実績」が錯誤を生じさせ、送金という処分行為に至った場合、十分に構成要件を満たす可能性があります。
〇 東京高判平成29年12月13日(SNS型詐欺事件)
判決では、LINEによる巧妙な誘導と、偽の証券会社サイトを使用した点を重く見て、懲役6年の実刑判決が言い渡されました。
この事例は、SNSやオープンチャットを使った「グループ型詐欺」の悪質性を認定した重要判例であり、本コラムのケースと構造が酷似しています。
〇 実務への落とし込み
企業や個人が関与する恐れがある副業や投資案件については、必ず事前のリスク評価と証拠保全手順を整備すべきです。
従業員向けSNSトラブル対策研修も含め、「うまい話」を受け取ったときにどう判断するか、その初動教育が鍵になります。
【おわりに】
誰が加害者で、誰が被害者なのか。
SNS時代の詐欺は、その境界を曖昧にしながら、静かに人の信頼と尊厳を奪っていきます。
「警察に相談したけど、なにもしてくれなかった」
そう漏らす前に、私たちのような存在が間に立つ必要がある。
本当に困ったときに、真っ先に駆けつけるのは、「正義を諦めない人間」でなければなりません。
ディフェンス・カンパニーは、困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
信じることは、武器にもなる
―人の信頼を裏切って得る金は、必ず誰かの正義によって裁かれる。だからこそ、信頼の本質を見極める眼を養え。
※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。
法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。