正義の過剰が招く組織崩壊とその防ぎ方
◆現実に起きている事案と背景
「コンプラ違反なんてうちは大丈夫」そんな油断が招くのは、2024年度に370件以上・負債総額3,790億円にも上るコンプラ違反倒産の急増です
過剰なチェックが現場を萎縮させ、時に真に守るべき正義すら潰してしまう。そんな「暴走」コンプライアンスが企業を内部から崩壊に導いているのです。
【問題の本質についての分析】
捜査一課出身として、私は現場の「緊張感」を大切にします。明確で迅速な指揮が必要な組織では、過剰な抑制は逆に不正温床となります。警察でも、厳罰至上主義だけでは捜査現場は委縮し、重大事件を見逃す危険があった。企業においても、過度な規則や通報制度は、「誰も動かない」文化を生む。
組織を守るには、規則と裁量の均衡が不可欠です。警察の内部処分制度が「濫用」された過去もありますが、それゆえに「正しく使う」ための慎重な監視と教育があるのです。
【ディフェンス・カンパニーが提供する解決策】
〇 均衡あるコンプラ設計
通報・審査・処分のサイクルに「現場裁量」を交える制度設計で、組織運営は柔軟に。
〇 現場責任者の権限と判断支援
現場で適切に判断できるよう、訓練と権限委譲を進め、「誰が動いても同じ対応」の体制を築く。
〇 違反リスクの“見える化”
「不正のトライアングル」を使って、内部・外部リスクを見える化し、未然防止を促す。
〇 通報者保護+定期レビュー
通報制度は必須だが、通報も乱用され得る。内容も扱いも定期レビューし、濫用を防止。
〇 研修に“緊張感と裁量”を導入
法律や規則はもちろん、判断の重みを体験するロールプレイ研修で、意識と行動を養う。
〇 内部監査チームの多様化
複数視点を担保するチーム設計で「見ているだけ」の監査を防ぎ、現場理解も深まる。
〇 ガバナンス層との連携強化
経営層と定期対話し、現場の声を反映する双方向体制を確立。階層分断への歯止めに。
〇 通報後の「救済プロセス」明示
通報内容を元に支援・改善ができる流れと体制を明示し、「罠」のような制度所感を払拭。
〇 状況に応じた正義の基準設定
単なる法令遵守ではなく「正しさ」の判断基準に、経営理念や現場実情を連動させる。
【法的根拠と解説】 ~当社顧問弁護士の見解
〇 「懲戒処分や通報対応は、慎重な手続きが必要」最高裁平成30年7月19日判決(不当労働行為事件)
この判決では、ある企業が社員の通報を「会社に対する裏切り」と捉え、本人を懲戒処分したことが問題になりました。
最高裁は、「社員が通報した内容には相応の根拠があり、公益目的で行われた」と認め、企業の処分を不当と判断しました。
つまり、
・通報した内容に一定の根拠がある
・公益を守る目的だった
この2点が揃っていれば、会社は安易に処分してはいけないというのが、法律上の筋です。
この判例が私たちに教えてくれることは、
「通報されたからといって、その社員をすぐ処分してはいけない。会社側は事実関係を冷静に調べ、通報の目的・背景を確認する必要がある」ということです。
とくにコンプラ制度が整っていない会社では、
・通報が「逆恨み」でされる
・その通報を鵜呑みにして、上司や部下が一方的に処分される
こうした事態が頻発します。結果として、信頼関係は壊れ、職場は「監視と告発の場」になります。
この判例の教訓は、「通報制度を導入するなら、手続き・検証・救済の仕組みも一体化させる必要がある」という点です。
【おわりに】
「規則が意地悪なのではない。使い方を間違えているだけだ。」私は警察で犠牲者の声を聞き、犯人の人となりを探り、自白させてきました。その経験が教えるのは、規律と人間、機能と温情のバランスこそが“組織の命”だということです。過剰な正義は組織を壊す。ですが、適切な正義は組織を守る。それが私たちの知見と責任です。
ディフェンス・カンパニーは、困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。
【ディフェンス・カンパニーの格言】
過剰な鉄鎖ほど、解放の鍵にもなる
拘束と自由は表裏一体。正しく締めつけ、正しく解き放つ。それが組織の成熟と持続を支える。
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※本記事は、危機管理コンサルタントとしての見解を示したものであり、法的助言や法律事務の提供を目的とするものではありません。 法的判断が必要な場合は、当社の顧問弁護士をご紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。