情プラ法と警察

行政法の限界を超え、刑法で裁く現場戦略


2024年6月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」は、SNSや掲示板等のプラットフォーム事業者に対し、有害情報の削除や通報、対応体制の整備を義務づけました。
しかし、この法律は
「行政法的性格」が強く、事業者の義務や監督権限を規定するものの、直接的に投稿者を刑事処罰(懲役刑)する条文はありません。

そのため、警察はこの法律そのもので事件化することはほぼなく、刑法犯として立件可能な場合にのみ捜査に踏み出すのが実情です。


【警察が事件化する場合の主な刑法適用例】

  • 名誉毀損罪(刑法230条)
     事実の有無を問わず、人の社会的評価を低下させる投稿をした場合。
  • 信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条・234条)
     虚偽の情報や威力により、企業や個人の信用・業務を害した場合。
  • 脅迫罪(刑法222条)・強要罪(刑法223条)
     生命・身体・自由・名誉または財産に対して害を加える旨を告知し、畏怖させた場合。
  • 侮辱罪(刑法231条)
     具体的事実を示さず、抽象的な悪口で名誉を侵害した場合(2022年改正により法定刑が引上げ)。

このように、情プラ法は事業者対応のルールであり、実際の事件化は「刑法への法的スイッチ」を必要とします。


【情プラ法の罰則(事業者向け)】~当社顧問弁護士の解説

情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法)は、違法・有害情報がSNSや掲示板等を通じて拡散されることを防止するため、「特定電気通信役務提供者(プラットフォーム事業者)」に対し、削除対応や通報・報告、対応体制の整備義務を課しています。

この法律は「行政法的性格」を持ち、事業者の不作為や義務違反に対しては、刑事罰というよりも行政監督と罰金刑によって担保されます。

主な罰則規定

  • 総務大臣命令違反(第23条)
     総務大臣が発した削除・報告等の命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科されます。
     ※ここでの命令は行政命令であり、直接的に刑事事件として加害者を処罰するものではありません。
  • 虚偽報告・検査拒否(第24条)
     報告や資料提出において虚偽を述べた場合、または検査を拒否・妨害した場合は、30万円以下の罰金が科されます。
     ※これも事業者に対する制裁であり、投稿者個人には適用されません。

【問題の本質についての分析】

  • 情プラ法は被害者の迅速救済に有効だが、刑事責任追及には直結しない
  • 警察は「この法律で立件」ではなく、「刑法犯として立件」に切り替えるため、証拠や構成要件該当性の整理が不可欠。
  • 事業者が削除対応だけで終える場合、被害者は警察との接点を持たず、事件化の機会を失うことが多い。

【ディフェンス・カンパニーが提供する解決策】

刑法該当性の即時判定
投稿内容を分析し、名誉毀損・業務妨害などの刑法該当性を迅速に判定。被害者が「事件化できるか」を初動で明確にします。

証拠保全と構成要件整理
削除前に投稿内容・発信元情報を証拠化し、刑法各条文の構成要件に沿って警察提出用資料を作成します。

警察提出ルートの最適化
刑法犯として受理されやすいよう、被害届・告訴状を警察実務に沿った書式で整備。現場警察官の理解を得やすくします。

事業者対応と刑事対応の並行進行
情プラ法による削除依頼と、刑法による事件化準備を同時に進め、被害拡大防止と加害者特定を両立させます。

海外プラットフォームへの法的アプローチ
米国DMCAや現地法に基づき削除依頼を行い、同時に刑事証拠の確保も進めます。

再犯防止の監視体制
加害者の新規投稿や別アカウントを監視し、再犯時には即座に刑法犯として警察に通報します。

加害者資産の事前調査
損害賠償請求を見据え、加害者の財産・勤務先・取引状況を事前に把握し、判決後の回収可能性を高めます。

マスコミ・世論戦のサポート
事件化後に報道やネット世論が加害者有利にならないよう、被害者視点での広報戦略を構築します。

国会答弁・省庁資料の活用
最新の情プラ法運用状況や政府答弁を引用し、警察や事業者に対しても「制度上の後押し」を根拠づけます。


【おわりに】

情プラ法は、あくまで「事業者対応の枠組み」であり、加害者を刑事責任に問うためには、刑法犯としての立件が不可欠です。
ディフェンス・カンパニーは、この「行政法から刑法へのスイッチ」を確実に押すため、被害者・企業・社会に手を差し伸べ続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

法律は枠、正義は行動

制度の存在だけでは救われない。動かすのは、人と行動である。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。具体的な案件は必ず弁護士等の専門家にご相談ください。