不正競争防止法の落とし穴

営業秘密や顧客情報の持ち出しが企業を一瞬で危機に陥れる時代


近年、企業間取引や従業員の退職に伴う「営業秘密の持ち出し」「顧客情報の流用」が急増しています。
SNSやクラウドサービスの普及により、名簿データや取引先情報、価格表、販売ノウハウなどが容易にコピー・転送できる環境が整ってしまったことが背景にあります。

実際、警察庁や経済産業省の発表では、不正競争防止法違反の立件件数は年々増加傾向にあり、摘発されるケースは大企業だけでなく、中小企業・個人事業レベルにも広がっています。
しかも、加害者となるのはライバル企業や元従業員だけではなく、「取引先」「業務委託先」「外注スタッフ」なども含まれます。


【問題の本質についての分析】

不正競争防止法の対象となる「営業秘密」は、次の3要件を満たす必要があります。

  1. 秘密管理性(誰でもアクセスできない状態で管理されている)
  2. 有用性(事業に役立つ情報である)
  3. 非公知性(一般に知られていない)

しかし、多くの企業はこの「秘密管理性」で躓きます。
パスワード管理が甘かったり、退職者が社内共有フォルダへ自由にアクセスできたり、名刺管理アプリや個人PCに取引データを保管しているケースは少なくありません。
この状態では、仮に情報を盗まれても「営業秘密」としての法的保護が認められず、民事・刑事での救済が困難になります。

一方で、知らずに他社の営業秘密を受け取ってしまった側も危険です。
特に新規採用者が前職で使用していた資料をそのまま持ち込んだ場合、会社ぐるみでの不正取得と判断されることもあります。


【ディフェンス・カンパニーが提供する解決策】

事前診断によるリスク可視化
現状の情報管理体制を徹底的に洗い出し、自社が保有する情報のうち、法的に営業秘密として保護可能なものと、保護が難しいものを明確に切り分けます。これにより、重点的に守るべき情報が特定できます。

秘密管理体制の構築
アクセス権限の最小化、ログ管理による監視、紙資料の施錠保管、電子データの暗号化、社外アクセス制限など、物理的・デジタル的な多層防御を組み合わせ、漏洩の余地を減らします。

社員教育と誓約書運用
営業秘密の範囲や重要性、違反時の法的リスクを従業員・役員・委託先に理解させ、秘密保持誓約書や競業避止条項を適切に運用します。退職時には持ち出し禁止の最終確認と誓約書の再取得を徹底します。

業務委託先・外注先との契約整備
NDA(秘密保持契約)や業務委託契約に、対象情報・禁止行為・違反時の制裁を明確に盛り込みます。ひな形契約ではなく、業種や実務内容に即したカスタマイズが不可欠です。

退職者動向モニタリング
退職後もSNSや業務活動をモニタリングし、不正利用の兆候があれば即時対応できる体制を構築します。情報流出は早期発見が肝要です。

初動証拠保全チームの即時投入
不正使用の疑いがあれば、元刑事とITフォレンジックチームが現場に入り、裁判で通用する形で証拠を確保します。遅れれば遅れるほど、被害は指数的に拡大します。

弁護士連携による迅速な仮処分申立
提携弁護士と連携し、被害が広がる前に差止命令や仮処分を申立て、情報流出を即座に止めます。場合によっては同時に刑事告訴も行います。


【法的根拠と解説】~当社顧問弁護士の見解~

不正競争防止法第2条1項7号は、「営業秘密を不正の利益を得る目的で使用又は開示する行為」を禁止しています。
違反すれば、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事罰(10年以下の懲役または2000万円以下の罰金、または併科)の対象となります。

判例としては、東京地裁平成29年2月23日判決(ソフト開発会社事件)が有名で、退職者が顧客情報を持ち出しライバル会社で使用した行為について、営業秘密性を認定し損害賠償を命じています。
この事例でも「秘密管理性」の確保が立証の決め手でした。


【おわりに】

情報漏洩は一度起きれば取り返しがつかず、企業の信用失墜・顧客離れを招きます。
ディフェンス・カンパニーは、困っている人、企業、社会に手を差し伸べる存在であり続けます。


【ディフェンス・カンパニーの格言】

情報の守りは、戦わずして勝つ最初の一手


情報漏洩を防ぐことは、競争を制するための最も静かで強力な戦術であるため。


※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、特定の事案や個別の法律相談に対する助言ではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。